理事長挨拶
このたび、特定非営利活動法人がん臨床研究機構(NPO-CORE)の第3代理事長を拝命いたしました大江裕一郎です。NPO-COREは医師が中心となって行う「医師・研究者主導の臨床試験」に対する支援、がん臨床研究に関する情報提供、臨床研究に関する教育事業等の活動を通して、がん患者さんや一般市民の皆様に最新かつ最善の治療を提供し、一般市民の健康と福祉の増進に寄与することを目的として設立された特定非営利活動法人です。私は2006年の当機構の設立時より社員としてかかわらせていただきましたが、初代理事長の下山正德先生、第2代理事長の水谷友紀先生が発展させてこられた当機構をさらに充実したものにする所存です。
私は2014年からJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)肺がん内科グループ代表者、2017年からJCOG代表者として、2025年3月まで、がん臨床試験の企画・実施や若手育成に尽力してまいりました。JCOGとNPO-COREはまさに表裏一体の関係にあります。これまでは、主に臨床試験を実施する側の立場でしたが、これからはNPO-COREの理事長として臨床試験の基盤を支えていきたいと思います。当機構の業務は5つの部門で行われています。データマネージメント部門は、収集されたデータを注意深くチェック・検討することで、臨床試験が正しく安全に行われるように努めています。システム部門は、データベースの構築や、コンピュータやネットワークの管理を行うことで、研究者の手間を少なく、かつ正確なデータを収集できるような工夫を続けております。オペレーション部門は、プロジェクトの管理、規制対応、広報、コミュニケーション支援を行い、臨床研究が品質を保持して遅滞なく遂行できるように努めています。品質保証部門は、研究の進捗確認、有害事象報告の審査、研究実施計画書の改訂審査、中間解析審査、研究結果公表審査の支援を行い、また施設訪問監査を実施することで臨床研究の品質管理・品質保証活動を続けています。総務部門は、その他の事務のマネジメントを行うことで、各部門が仕事に集中できるように注力し続けています。NPO-COREは、これら専門的な部門の総力をもって、臨床試験のサポートを行っています。
最近のがん医療の進歩には目覚ましいものがあります。特にGlobal企業による大規模な治験により有効な新薬が続々と開発されており、現在のがん医療の進歩に製薬企業が果たしている役割が大きいことには間違いありません。しかし、患者さんに最善の医療を届けるためには、企業が実施する治験のみでは十分ではありません。臨床現場であがってくる様々なクリニカルクエスチョンを解決するには「医師・研究者主導の臨床試験」が不可欠です。国際的にみても近年では、「医師・研究者主導の臨床試験」が減少しているように見受けられるなかで、JCOGは世界的のトップレベルの「医師・研究者主導の臨床試験」を実施する組織です。JCOGの臨床試験の基盤を支えているのが、当機構の30名を超える職員であると言っても過言ではありません。
結びに、当機構のさらなる発展と、がんに苦しむすべての人々の未来がより明るいものとなることを祈念し、就任の挨拶とさせていただきます。
2025年7月1日
がん臨床研究機構(NPO‑CORE)
理事長 大江裕一郎